森林は生態系サービスが高い 鷲谷いづみ東大教授が公開講座で講演  国民森林会議(只木良也会長)は九月11日、東京の全林野会館会議室で開催した公開講座で、鷲谷いづみ東京大学教授から「生物多様性保全と森林」について講演が行われた。 鷲谷教授は、地球環境の急速な変化に対応して、生物多様性保全に関する世界的な取り組みの状況を紹介するとともに、生物多様性の定義とその重要性、森林の生物多様性等について詳述した。その中で、森林には市場のある生態系サービスと市場のない生態系サービスがあり、後者が重要であり強くアピールすることの緊要性を強調した。  講演のごく一部を紹介すると、   生態系の多様性はタイプ分けすると、森林、草原、湿地などがある。日本の里地里山は異次元の生態系があり、農地の生態系があり、あらゆる範囲をとっても多様性が高い空間になっている。  生物多様性の重要性をアピールする言葉として、一九九〇年にアメリカの若い女性生態学者が「生態系サービス」と言い始めた、日本では、生態系のある部分を「多面的機能」という言葉で表しています。生態系サービスとは、生態系の働きによって生み出される、人にとってのあらゆる便益と定義されている。  現代の物質的に豊かで便利な国民生活は、過去五〇年の国内の生物多様性の損失と国外からの生態系サービスの供給の上に成り立ってきた。二〇一〇年以降、過去の開発・改変の影響が継続する。開発による影響は後に現れてくるので、まだ何十年か続く可能性も想定される。  里地里山の利用管理の縮小は、これから深刻になるだろうと評価される。いまは序の口で、問題が認識されているけれど、これから深刻になってくる。一部の外来種の定着・拡大の影響は、深刻な問題だし、地球温暖化の危機ではさらなる損失が予想される。  森林の生態系サービスには、市場のあるものとないものがある。木材・林産物生産は市場のあるサービス。災害の防止、清浄な水の供給、レクリエーションの場の提供、精神的・文化的サービスなどは市場がない生態系サービス。  生態学の研究者として率直に思うことは、人工林は木材生産のための森林で、他の機能があるとアピールしても、木材生産を主目的に、一つの生態系を利用するためのシステムを作ったので、モノカルチャーになる。  多様な生態系サービスを提供できる森林に変えていくことで、生物多様性の高い森林になる。それからみると間伐の遅れた森林は、元々の狙いである木材生産からみてもよい森林ではない。  今まで森林は、良質の木材生産を主眼としてきたが、多様な樹種でそれぞれの木や植物同士が互いに調整して、よいシステムを作ることであれば、もっともっと自然の営力を生かした森づくりをしてもいいのではないか。 森林はいろんな意味ですごく価値が高い。森林の生態系サービスを持続可能な形で、木材を含めて確保するのは重要な課題だが、就業者の構成比は第三次産業にシフトしている。今後は第三次産業的な要素で、山の暮らしを立てていかざるを得ない。森林は公益の観点から生物多様性や生態系サービスを生み出すものとしての価値をアピールすべきだ。